あとがき


 「筑波大学平家部会論集」第十二集、終刊号の編集を担当せていただきました。

 ふり返ると平成六年の第四集から掲載していただいて、今号で九回目、本数だけは犬井先生に次ぐものとなりました。自分の書いたものが初めて活字になった第四集を名刺代わりに、学外の研究会へ出かけていったことが、今でも鮮やかに思い出されます。そして「平家部会論集」を差し出すと、多くの先生方がこの論集をご存知だったことに、わけもなく誇らしい気持ちになったものでした。こうしてお世話になってきた論集の、終刊号の編集に携われましたことを大変嬉しく思います。終刊の辞にもありますように、「平家部会論集」なのだから十二巻までは出そう、などと冗談交じりに話していたのは、まだ私が大学院生として先生の研究室での読書会に参加していた頃のことだったと記憶しております。あれから年去り年来たって、いよいよ第十二集。遠い先のことのように思われた終刊が、現実のものとなりました。

 終刊号には、犬井先生をはじめ、多くの方々からご投稿をいただきました。飯塚さんは早い頃からの部員で今や中堅研究者として後続を育てる立場でいらっしゃいます。金沢さんも大学で教鞭を執られながらのご投稿です。佐藤さんのご論は長い間あたためてこられたものとうかがっています。徐さんはサバティカル・イヤーで日本に滞在されているところを、内田さんはご活躍中の台湾から、裴さんは韓国から、林さんは台湾からのご投稿です。中田さんは旧姓児島さんとしてご執筆いただいた第九集以来のご投稿です。本誌のもう一人の編集担当として雑務の一切を引き受けてくれた岩城君は新進気鋭の若手研究者であり、小野さんと舩城君は大学院生として、着実に研究者としての地歩を固めておいでのようです。

 このように、「平家部会」で植えつけられた勉学の種は、時を経て、それぞれの場所で芽を吹き、根を張り、若葉に萌えるものもあり、実を結ぼうとしているものもあるようです。

 今回編集に携わって得たものは、どんなに時間的な隔たりがあっても、部員として原稿のやりとりが始まると、それまでの時間は全く関係なく、たちまち犬井先生の研究室に戻ったような感覚で連絡が取れるという喜びでした。そんな役得を味わいつつ、懐かしくも楽しく、そして大いに勉強させていただいた編集作業でした。それが誌面であっても、かの研究室での読書会のように、多方面への関心・研究にふれることのできる、そんな終刊号になったと思っております。

 この第十二集で「筑波大学平家部会論集」は終刊となります。しかしこれは新たな出発でもあるはずです。それぞれの「平家部会」が、今後ますます発展していくことを願ってやみません。
2007.3.31 第十二集編集担当 小井土守敏 記